毎日映コンの軌跡⑩ 映画と結婚した大女優の遺産 第1回田中絹代賞に吉永小百合
1978年3月21日付の毎日新聞社会面に「田中絹代さん きょう一周忌 宙に浮く“大いなる遺産”」との見出しの記事がある。毎日映コンで女優賞を最多受賞した大女優、田中絹代は前年、67歳で亡くなっていた。「映画と結婚した」と称した田中は生涯独身で身よりも見つからず、神奈川・油壺の別荘など総計1億円ほどの遺産の相続先がないというのだ。遺産を管理していたのは田中の遠縁に当たる映画監督の小林正樹で、遺産の有効活用法として「『田中絹代賞』を設けるとか」と語っていた。 この時はまだ具体的な動きはなかったものの、その後、毎日映コン関係者と小林らの間で賞の設立が話題に上る。小林が病に倒れた85年、小林と親しか...