謎とスリルのアンソロジー「テナント/恐怖を借りた男」もう誰も信じられない
キーワード「人間不信」 異常心理映画の巨匠ロマン・ポランスキーの劇場未公開作 映画には、作り手自身の物の考え方や実体験が大なり小なり反映されるものだ。その点においてロマン・ポランスキーほど、作品と実人生を重ね合わせて語られるフィルムメーカーは他にいないだろう。 1933年、ユダヤ系ポーランド人の家系に生まれたポランスキーは、第二次世界大戦中にナチス・ドイツのホロコーストに巻き込まれ、両親を強制収容所に送られた揚げ句、自らも流転のサバイバル生活を強いられた。ヨーロッパとハリウッドで数多くの名作を世に送り出したポランスキーの特異な作風は、この幼少期の悲惨なトラウマに根ざしているとされ...

高橋諭治
2022.5.31