黒人襲う〝人類最良の友〟 名匠サミュエル・フラーのお蔵入りした問題作「ホワイト・ドッグ 魔犬」:謎とスリルのアンソロジー
犬という動物は〝人類最良の友〟と言われるだけあって、恐ろしい怪物として描いて成功した作品はほとんどない。ハリウッドの動物パニック映画ブームのまっただ中に作られた「ドッグ」(1976年)、「怒りの群れ」(77年)はパンチ不足だったし、狂犬病のセントバーナードが車中に避難した親子を追いつめる「クジョー」(83年)も、スティーブン・キングの原作小説のほうが怖かった。カンヌ国際映画祭でパルムドッグ賞を受賞した「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(ラプソディ)」は、250匹の犬軍団が人類への反乱を起こすスペクタクルが壮観だったが、神秘的な寓話(ぐうわ)ゆえに怖さは控えめだった。 キーワード「社...
高橋諭治
2023.5.25