毎日映コンの軌跡④ 「にごりえ」「二十四の瞳」 受賞作は時代の空気とともに
第8回(1953年)毎日映画コンクールの日本映画賞は、今井正監督の「にごりえ」だった。樋口一葉の三つの短編を原作としたオムニバスである。キネマ旬報ベストテンの1位、ブルーリボン賞も獲得し、この年を代表する作品となった。しかし同じ年、後年の「世界映画史上の傑作」投票などで必ず上位に含まれる作品が賞を逃した。小津安二郎監督の「東京物語」である。映コンでは次点、キネ旬でも2位に甘んじた。 毎日映コンの日本映画賞は当時、映画会社の自薦と審査委員の推薦作品を候補とし、公開投票で決められた。第8回では2作の他、溝口健二監督の「雨月物語」など計18本が候補となっていた。54年2月5日、東京・大阪の審査会場...