社会性と怖さ、両立期待
日本発ホラー映画の金字塔といえば、「リング」(1998年)だ。テレビ画面からはい出る黒髪の貞子のおぞましさといったらなかった。興行収入は推定20億円前後で、ブームの引き金になった。「“それ”がいる森」は、「リング」を手掛けた中田秀夫監督のホラー新作である。 本作でも、新たなキャラクター(それ)が登場する。不気味ではあるが、おぞましさ、怖さからは少し遠のいた。貞子のように、見る者の意識に強烈に粘りついてはこない。ただ、興味深い点がある。主要な登場人物である子どもたちには、とてつもない怖さを与えることだ。 「リング」がそうだったように、本作もまた、社会の一断面、及び人々の日常生活に描写の根を置...