SHE SAID
マリア・シュラーダー監督
「SHE SAID/シー・セッド その名を暴け」記事件数
お正月、近所のシネコンで「空の大怪獣 ラドン」(1956年、本多猪四郎監督)を見ていたら、新聞記者が出てきた。同業者はスクリーンの中でも気になるもの。 田島義文演じる地元紙記者が、怪生物が人間を襲った事件を取材しに阿蘇の炭鉱に乗り込んでくる。死者が出て大騒ぎの中、事務所の電話を占拠して記事を送り、事故現場にも警察署にもズカズカ入り込んで一番大きな顔をしていた。田島は他の映画でも記者を演じていたけれど、いつも態度がでかくてずうずうしい。でも憎めない。この時代の「ブン屋」のイメージがうかがえる。 もちろん、記者の本分は調子のいい狂言回しではなく、真実を追究し権力を監視すること。地道に取材を積み...
勝田友巳
2023.1.18
キャスティング・カウチという言葉があります。キャスティングとはどの俳優が誰の役を演じるのか、映画の配役を決めることですね。カウチはソファのこと。ほら、ずっとソファに座ってテレビばっかり見てる人のことをカウチ・ポテトなんて呼ぶじゃありませんか。では、ソファで配役を決めるというのはどういう意味でしょうか。ヒントはソファに複数の人が座ることができること、そして座るだけでなく他の行為もできるという点にあります。 隠されていたキャスティング・カウチ もうおわかりになったでしょうが、性的な関係によって映画の配役を決めるわけですね。プロデューサーをはじめとした映画の企画担当者が、自分の部屋に...
藤原帰一
2017年10月、ハリウッドの有力プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインの性暴力を暴いた記事が、ニューヨーク・タイムズ紙に掲載された。#Metoo運動に火を付けたこの記事が、世に出るまでを描く。ハリウッドお得意の実録モノではあるが、同ジャンルの他の作品とはひと味違っている。 調査報道部の記者ミーガン(キャリー・マリガン)とジョディ(ゾーイ・カザン)は、性暴力の情報を得て取材を開始する。数十年にわたり多くの女性たちが被害に遭っていたことを知るものの、守秘義務付きの示談や報復への恐怖、絶大な力を持つ相手への無力感やメディア不信など厚い壁に阻まれる。2人は粘り強い取材を重ね、証言や証拠を集めてゆ...
2023.1.13