この1本:「コンペティション」 暴走する表現者の本性
よくできたブラックコメディーには、チクチクするような刺激がある。俗物根性の染みついた主人公、皮肉で意地悪な人間観察。笑っているうちに自分に返ってくるシニシズムの矢。ラテン圏の名優3人を配し、毒気たっぷりに映画製作の舞台裏を描く。 製薬業界の頂点に立つ嫌われ者の大富豪が、自分の名前を残すために映画製作に乗り出した。ノーベル文学賞作家の小説の映画化権を買い、メディア嫌いの俊英ローラ(ペネロペ・クルス)を監督に据えた。ローラは主人公2人に大物俳優のイバン(オスカル・マルティネス)とフェリックス(アントニオ・バンデラス)を起用する。ストイックな演技派のイバンと大スターで自己顕示欲の塊のフェリックス、...