「君にささやかな奇蹟を」どこにでもいるひとりの大人が、誰かにエールをもらって、夢を追いかけなおす物語。
幼い頃に抱いた夢を、そのまま幸せな形で叶(かな)えている大人は、どれくらいいるだろうか。成長とともに、人は諦めを覚えて、夢は破れたり変化したりしていくものだけれど、幼い自分のあの夢を、今も懐かしく心のどこかに灯(とも)しつづけている大人は、きっとたくさんいるだろう。 この物語の主人公・阿部伊吹(あべいぶき)も、そんなひとりだ。彼女の夢は「絵本作家になること」。夢を叶えるべく、いくつもの新人賞に応募するも、落選が続き、ゆるやかに諦めて、今は老舗百貨店の子供服雑貨売り場で働いている。今の仕事にはやりがいを感じているし、もうそろそろチャレンジの日々も潮時かな――と感じていた。 この物語は、そ...
耒礼美子
2023.1.11