特選掘り出し!:「草の響き」 函館の叙景、黙々と走って
「きみの鳥はうたえる」などの原作者、佐藤泰志の小説の5度目となる映画化。心のバランスを崩して妻純子(奈緒)と一緒に函館に帰郷した和雄(東出昌大)は、医師の勧めで治療のために街を走り始める。毎日走り続ける中で、徐々に心の平穏を取り戻していく。純子は慣れない土地で和雄に寄り添って支えようとする。 走ることは作品に躍動感を与えたり、感情の発露の一つとして表現されたりしがちだ。しかし、本作では黙々と繰り返すことで内面の落ち着きを少しずつ積み重ねていく。草の土手や海辺、住宅街の風景が安心感と人の営みを醸し出す。函館の街がこれほど物語にしっくりくるのは、原作(者)との親和性ということだろう。引きの映像を...