この1本:「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」 日常の寓話笑って怖く
最初はたぶん、ギョッとする。俳優は無表情でセリフは棒読み、操り人形のようにギクシャクと動く。そして地味。しかし、ひるむべからず。池田暁監督は確信を持ってこの奇妙な様式を貫き、骨太のメッセージを伝える。ジワジワと面白く、そして怖い。 津平町は川向こうの太原町と交戦中だ。戦闘時間は午前9時から午後5時。役場の職員露木(前原滉)は、出勤すると着替えて持ち場につき、サイレンを合図に川向こうに発砲を開始する。いつからなぜ戦っているのか誰にも分からない。「撃てと言われた場所を撃っていれば大丈夫」なのだ。やがて露木は「楽隊」への異動を命じられる。しかし楽隊の兵舎は誰も知らず、そもそも楽隊があるのかすら分か...