この1本:「愛のまなざしを」 亡き妻巡り渦巻く感情
精神科医の貴志(仲村トオル)は妻の薫(中村ゆり)を亡くした喪失感から逃れられない。医師としては優秀だが、薫の亡霊と対話して自分を責め続け、精神安定剤を手放せない。貴志の元に、感情が不安定な綾子(杉野希妃)が患者として現れる。孤独を抱え、いびつな異性関係しか築けない。2人は同じ喪失の痛みを持つと知り、互いを求め合うようになる。しかし綾子は、やがて貴志を拘束し我が物顔で行動し始めた。 担当医と患者の立場だった2人の、支配と被支配の力関係が逆転する心理劇――。ではあるのだが、一筋縄ではいかない。新たな登場人物が現れ、交錯する視線の数が増えるごとに、貴志と綾子の人物像が変わり、関係性が交錯してゆく。...