この1本:「あのこは貴族」 隔たりを漂う空気で
格差社会、社会階層、家父長制。言葉にすると堅苦しく、説明すれば図式的になりがちなことを、岨手(そで)由貴子監督は映像にして差し出し、画面に漂う空気として観客に得心させる。現代の女性をさまざまな視点とレイヤーで描き出す、知的で骨太、しかし柔らかく繊細な女性映画だ。 映画は東京の、境も壁もないがはっきりと隔てられた二つの世界を舞台にする。一つは生まれも育ちも東京の、医者のお嬢さま華子(門脇麦)の世界。女のしあわせは結婚して子どもを産むこと、30歳を目前に焦って見合いを繰り返す。もう一つには、地方出身の庶民の娘美紀(水原希子)が住む。苦労して慶応大に入ったのに実家の家計が苦しくて、夜のバイトでも学...