シンプルな情熱 喜びや痛みを鮮烈に
フランス現代文学の作家アニー・エルノーが、1991年に発表した自伝的ベストセラー小説の映画化。「去年の9月から何もせず、ある男性を待ち続けた」。そんな主人公エレーヌ(レティシア・ドッシュ)の回想で始まり、妻子ある年下のロシア人アレクサンドル(セルゲイ・ポルーニン)に心奪われた日々が紡がれていく。 エレーヌは出産、離婚を経験し、小学生の息子を育てながら、大学で教鞭(きょうべん)を執っている。知的で自立した女性だが、気まぐれなアレクサンドルの誘惑に抗(あらが)えず、自宅やホテルでの逢瀬(おうせ)に身を焦がす。女性が一方的に男性に従属する関係は、#MeToo運動時代の今なら誹(そし)りも受けそうだ...