「千夜、一夜」
登美子(田中裕子)は島の水産加工場で働いている。夫が失踪して30年になる。漁師の春男(ダンカン)は登美子への思いを何年も前から伝えているが、決して届かない。登美子は元町長から、2年前に中学教師の夫(安藤政信)が失踪した看護師の奈美(尾野真千子)を紹介される。奈美は「いなくなった理由がほしい」と折り合いをつけ、気持ちの整理を口にする。 年間約8万人といわれる行方不明者。映画は待ち続ける女の揺れる内心を見つめ、次第に分け入っていく。待ち続ける女と待つことに区切りをつけたい女が交錯し、そのコントラストが2人の女の生きざま、痛切な日々を想起させる。ただ、年月が過ぎても、変わらずに焦がれる春男の姿が、...