「世界が引き裂かれる時」
ロシアがクリミアを併合した直後の2014年7月。ロシアとの国境にほど近いウクライナ東部で暮らす妊婦イルカ(オクサナ・チャルカシナ)と夫トリクの自宅が、砲弾の誤射で半壊してしまう。修復作業に追われる中、間近でマレーシア航空機撃墜事件が発生し、夫婦を取り巻く状況は緊迫化していく。 ウクライナのマリナ・エル・ゴルバチ監督が撮り上げた戦時下のドラマ。ウクライナ人夫婦の日常は、現地を支配する親ロシア派勢力の傭兵(ようへい)らに脅かされている。ゴルバチ監督はその不条理の極みというべき現実を、緩やかなパンショットを多用した長回しでカメラに収め、画面のフレーム外からひたひたと迫ってくる暴力の影を暗示する。事...