この1本:「動物界」 〝解放〟のメタファー
往年のオオカミ男ものから「ザ・フライ」「ロブスター」まで、人間が動物に変身する映画は枚挙にいとまがない。当然ながらそれらはホラーやSFジャンルに属するが、フランスのセザール賞で12部門にノミネート(そのうち撮影賞など5部門を受賞)された本作は、比類なき新鮮なインパクトを放つ。一組の父子が織りなすヒューマンドラマであり、現代的な社会批評もはらむ独創性豊かな快作だ。 人間が動物に変異する原因不明の奇病が流行し、フランスでは政府が〝新生物〟と呼ばれる患者の強制隔離を行っていた。料理人フランソワ(ロマン・デュリス)は高校生の息子エミール(ポール・キルシェ)を伴い、新生物と認定された妻の移送先の南仏に...