特選掘り出し!:「おんどりの鳴く前に」 清新な風の下、渦巻く欲望
田舎道を走るトラックが揺れ、荷台から鶏が飛び出して歩き出す。とぼけたシーンで始まる今作、偏狭なムラ社会のリアルを描き、見て見ぬふりと良心のはざまで揺れ動く人の内面を突き付ける。 ルーマニア北部の静かな村。警察官のイリエ(ユリアン・ポステルニク)は仕事への野心はなく、果樹園を営みひっそりと第二の人生を送りたいと考えていた。しかし、平和なはずの村で惨殺死体が見つかる。新任警官は張り切って聞き込みするが、イリエは村長らから関わらないよう忠告される。 牧歌的な田舎の風景と、凄惨(せいさん)な事件のコントラストが鮮やか。イリエは中年で猫背、警官のイメージとほど遠い。村長から果樹園を低価格で譲ると言わ...