この1本:「アネット」 歌劇で新たな古典創造
レオス・カラックス監督10年ぶりの新作は、ミュージカルだ。「汚れた血」「ポーラX」など寡作ながら鮮烈で独特の映画を作る鬼才の、独創的音楽悲劇である。 人気絶頂の舞台芸人、ヘンリー(アダム・ドライバー)がオペラ歌手のアン(マリオン・コティヤール)と電撃結婚し、アネットが生まれる。そこから始まるヘンリーの転落物語を、カラックス監督は独特の語り口と映像を駆使し、スパークスの楽曲に乗せてつづってゆく。 冒頭の録音スタジオ、カラックスのキューで「さあ始めよう」と歌い始めたスパークスの2人は、立ち上がって歩き出す。ブースから出るとドライバーやコティヤールも加わり、建物を後にして歌いながら町の中を進む。...