この1本:「スペンサー ダイアナの決意」 封じられた希望の寓話
エリザベス女王逝去を嘆く英国民をニュースで見るにつけ、女王がいかに慕われたかを実感した。しかし王室が居心地のいい場所とは限らない。「スペンサー」は悲劇の皇太子妃、ダイアナが主人公だ。1991年のクリスマス、女王の私邸、サンドリンガム・ハウスで王室を去る決意をするまでの3日間を描く。といっても事実を再現するのではなく、王室という制度の牢獄(ろうごく)にとらわれた一人の女性の、絶望と孤独を描き出すのだ。 ダイアナ(クリステン・スチュワート)はクリスマスの行事がイヤで仕方ない。自分で車を運転して道に迷ったうえに寄り道までして大遅刻。遅れたダイアナをとがめるでもなく、義母(つまり女王)や夫(皇太子)...