「GEM Partners」代表の梅津文さんが、独自のデータを基に興行を読み解きます

「GEM Partners」代表の梅津文さんが、独自のデータを基に興行を読み解きます

2021.7.29

データで読解:この夏の代表作が誕生

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

細田守監督作品「竜とそばかすの姫」は2週目も1位をキープし、累計興行収入は24億円を超えた。細田監督の最高興収を記録した「バケモノの子」(最終58.5億円)を少し上回るペースであり、この夏の代表作となることはもちろん、監督の新記録となりそうだ。

データを見ると、「バケモノの子」と同様に男女10代、20代の鑑賞意欲度が高め。男女の意欲度は「バケモノ」では同レベルだったが、本作は女性がやや高め。かなり早い段階からテレビ、ネットで宣伝を展開して作品の認知度・意欲度を高め、公開直前、公開後も過去作品をはるかに上回る大量の宣伝が行われている。作品提供側もメディアも一体となって、何としてもヒットさせようという決意が感じられる多さだ。

コロナ禍以降、映画参加者人口は減少したままで、劇場の動員もコロナ前を下回る水準が続いている。産業の復興のためにはコロナ禍の収束とともに、作品の供給とヒットさせるための資本の投下が必要だ。日本に限らず感染拡大状況は予断を許さず、消費者のマインドと作品供給側の判断も流動的だ。そんな中で人気監督の新記録となりそうな大ヒット作が生まれたことは、映画ファン、産業双方にとって明るいニュースである。(GEM Partners代表・梅津文)