時代の目:「東京オリンピック2017 都営霞ヶ丘アパート」 かき消された小さな声
興奮と困惑が半ばして閉幕した東京オリンピック。このドキュメンタリーは五輪の影、権力と市民の関係を映す。今見るべき一本だ。 国立競技場に隣接した都営霞ケ丘アパートは、1964年の前回東京五輪開催時に建てられ、今回五輪で一帯を再開発するため2017年までに取り壊された。青山真也監督は14年からアパートに通い、移転を強いられた住民たちの姿を記録した。 築50年のアパートは高齢化が進み、平均年齢は65歳以上という。身体障害を抱えた男性や、夫に先立たれた独居の女性らも、等しく期限付きの立ち退きを迫られる。住み慣れた環境から離れることも、不自由な体や心もとない収入で引っ越しの準備をすることも、彼らの意...