時代の目:「生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事」 組織と個、証言で迫る実像
沖縄戦直前に赴任した島田叡(あきら)知事の実像に迫るドキュメンタリー映画である。玉砕や自決といった凄惨(せいさん)な状況も語られるが、沖縄戦の実態を官僚の側から描いたことは特筆すべきだろう。 島田は1945年1月に沖縄県知事に着任。約5カ月行政を指揮し、組織的戦闘の終結直後、摩文仁(まぶに)の壕(ごう)を出て消息を絶つまでを追った。ただ、島田の映像は残っていない。音声も日記などもない。写真数枚と軍とのやりとりの記録、周辺にいた官吏や市井の22人の証言から人間島田叡の実像を描き出した。軍の方針にあらがいきれず戦争を遂行したトップの責任と、自決せずに一人でも多く命を救おうと説得し、希望を与えた両...