この1本:「スウィート・シング」 残酷な現実を飛び越え
詩的な美しい風景や登場人物の感情の発露をスクリーンにきらめかせるみずみずしい感性は、どうやら若い映画作家だけの特権ではないようだ。それを証明したのはアレクサンダー・ロックウェル。「父の恋人」「イン・ザ・スープ」などで1990年代に脚光を浴びながら、長らく忘れ去られていた米インディーズ界のベテラン監督、25年ぶりの日本公開作である。 15歳のビリーと11歳のニコの姉弟(監督の実子ラナとニコ)は、父アダム(ウィル・パットン)と貧しくも幸せに暮らしている。しかし別居中の母と過ごすはずだったクリスマスは散々な結果となり、酒癖がひどいアダムは病院送りに。居場所を失った姉弟は、あてどない旅に出る。 や...