この1本:「栗の森のものがたり」 連続する絵画的な映像
ストーリーがけん引する映画もあれば、キャラクターを掘り下げる作品もある。映像ももちろん大事だが、そればっかりでは動く絵画になりかねない。それでも中には、映像が有無を言わさぬ力で映画を決定づけることもある。本作は、光と色に彩られた絵画的なショットの連続に見ほれるうちに、淡いが確かな感情が宿る、芸術的秀作だ。 舞台はイタリアとユーゴスラビアの国境にある、森の中。映画は3章に分かれ、第1章の主人公マリオ(マッシモ・デ・フランコビッチ)は、金勘定に細かい棺おけ職人。邪険にしてきた妻ドーラ(ジュジ・メルリ)が重い病と気付いて慌て始める。第2章では、森の栗を拾って商っているマルタ(イバナ・ロスチ)が、マ...