特選掘り出し!:「エンパイア・オブ・ライト」 鬱屈した日常に差す光
近年は「007」シリーズなどの大作に携わってきたサム・メンデス監督が、コロナ禍のさなかに構想したヒューマンドラマ。彼自身が青春期を過ごした1980年代初頭を背景に、海辺の映画館で働く男女の人間模様をつづる。 エンパイア劇場で働くヒラリー(オリビア・コールマン)は、身勝手な支配人エリス(コリン・ファース)との関係に嫌気が差している。ある日、夢を追うことを諦めた黒人青年スティーブン(マイケル・ウォード)が仲間に加わり、彼女の鬱屈した日常が動き出す。 社会の分断や不寛容といった現代に通じるテーマも盛り込まれているが、目を奪うのはエンパイア劇場という巨大な舞台装置だ。アールデコ調の内装が厳かな歴史...