私と映画館:一番風呂と試写
一番映画を見たのは、松竹大船撮影所の映写施設「大船会館」だ。今はない撮影所(現・鎌倉女子大)の表門を入って正面の灰色の建物。表門には守衛室とタイムレコーダーがある。朝出勤すると打刻して通る。この時のあいさつへの守衛の受け答えで、撮影所内でのリアルな「偉い度」が分かる。小津安二郎監督には全員「気を付け、敬礼」。小津さんはピケ帽をとり、会釈して通る。その時、薄くなった後頭部を見て「勝った」という大部屋の古株がいた。「何をやってもかなわないが、髪の毛の量で勝った」のだそうだ。 撮影所にはいろんな人がいた。例えば、撮影が済んだセットをばらす女性群。もんぺにつっかけ、頭に白手拭いで、床に散らばったくぎ...