特選掘り出し!:「遺灰は語る」 時空を超えた不思議な体験
イタリアの名匠、タビアーニ兄弟の弟パオロが、兄ビットリオの亡き後、初めて単独で監督を務めた作品である。兄弟の代表作の一つ「カオス・シチリア物語」の原作者であるノーベル賞作家ルイジ・ピランデッロの〝遺灰〟をめぐる物語だ。 「遺灰は故郷シチリアに」との遺言を残し、1936年にローマの自宅で死去したピランデッロ。ところが独裁者ムッソリーニはそれを許さず、戦後になってシチリアからやってきた特使が遺灰を運ぶことに。 遺灰は運搬中もシチリア到着後もトラブル続きで、特使や司祭、見物人は右往左往。そんな風刺の利いたロードムービー風の悲喜劇を映し出すモノクロ映像は時に夢幻性を帯び、シチリアの大地にそびえる巨...