「コット、はじまりの夏」 生きる喜びが解き放たれていく
1981年夏のアイルランドの田舎町。大家族の中で暮らす9歳の少女コット(キャサリン・クリンチ)は赤ちゃんが生まれるまでの間、遠い親戚のキンセラ夫婦に預けられる。寡黙なコットは、妻アイリン(キャリー・クロウリー)と井戸の水をくみに行ったり、口下手な夫ショーン(アンドリュー・ベネット)の牛の世話を手伝ったりと3人の時間を重ねていく。 親戚夫婦との暮らしで、少しずつ子どもらしい伸びやかさや感情を表現するすべを見いだしていくコットの姿がみずみずしい。人へのいたわりや苦悩に触れて生きる人を間近に見て、自然とそれを受け入れていく。何気ない日々の営みを丁寧、かつ繊細に描写して積み重ね、穏やかな内面を作り出...