この1本:「ハッチング 孵化」 怪鳥を育む思春期の陰
大自然に囲まれたきれいなおうちで暮らす少女が、森の中で卵を発見。やがて少女がベッドでひそかに温めた卵からは醜い怪鳥のひなが生まれ、大事件を巻き起こす……。 そんなおとぎ話のような導入部からして引き込まれる本作は、珍しいフィンランド産のホラー映画。北欧らしい澄みきった空気感、洗練されたインテリアに満たされた作品だが、こちらの想像のはるか斜め上をいくストーリー展開に圧倒される衝撃作だ。 主人公ティンヤ(シーリ・ソラリンナ)は素直で純真な少女だが、体操選手として母親の期待に応えられず、つらい練習を耐え忍んでいる。前述した怪物は、思春期特有の不安が渦巻くティンヤの暗黒面が表出した分身のような存在だ...