この1本:「ビーチ・バム まじめに不真面目」 ケチな良識、蹴っ飛ばす
いやはや不謹慎極まりない。不道徳で無節操、しかしこれが痛快なのだ。「ガンモ」「スプリング・ブレイカーズ」などで米国社会ののけ者と、彼らを追い立てる世間を描いてきたハーモニー・コリン監督。ここでははみ出し者の勝利を高らかにうたう。コロナ前に作られたが、今の息苦しさの中できらめきを放つ。 かつて天才と評された詩人のムーンドッグ(マシュー・マコノヒー)は、大富豪の妻ミニー(アイラ・フィッシャー)の財産で放蕩(ほうとう)生活、時々タイプライターに向かう日々。やることなすことメチャクチャだ。昼夜を問わず酔っ払い、娘の結婚式にも遅刻して現れるや花婿をこき下ろす。 言いたい放題のやりたい放題、野放図な痴...