この1本:「ガガーリン」 廃虚で探る宇宙への夢
「憎しみ」(1995年)、「ディーパンの闘い」(2015年)、「レ・ミゼラブル」(19年)と、フランス映画に登場する郊外の集合住宅は社会的荒廃の象徴だった。しかし本作は団地が舞台でも、分断と対立ではなく融和と協調を描こうとする。少々甘口ながら、すさんだ時勢にこのメッセージ、胸にしみる。 ソ連の宇宙飛行士にあやかって名付けられたガガーリン団地。16歳のユーリ(アルセニ・バティリ)も彼の名前をもらい、宇宙飛行士を夢見ていた。しかし団地は老朽化が進み、パリオリンピックに向けて取り壊しが決まる。ユーリの母親は家を出たまま戻らない。解体工事が始まる中、行くあてのないユーリは一人団地にとどまることになっ...