この1本:「夏の終わりに願うこと」 素描に漂う複雑な情感
闘病中の父親の誕生パーティーを開く、メキシコの一家の一日を描く。しかし際だった物語はなく、視点人物は小さい娘ということになるが、はっきり主人公と言える人物も登場しない。にぎやかな一日の素描なのに、複雑で重層的な情感を漂わせている。 7歳のソル(ナイマ・センティエス)は父親トナ(マテオ・ガルシア・エリソンド)の誕生日を祝うため、母親のルシア(イアスア・ラリオス)と祖父の家にやってくる。発声補助器を付けた精神科医の祖父、トナの2人の姉と兄、その子どもら大勢が集まってパーティーの支度を進めていく。その傍らで、祖父は患者を診察し、おばが招き入れた霊媒師がトナの回復のために霊をはらうとウロウロして、祖...