この1本:「TITANE/チタン」 壊れて荒ぶる愛の寓話
こんな映画、見たことない。ジュリア・デュクルノー監督の第2作は観客の限界を試すように攻撃的で、バカバカしくも恐ろしく、既成の枠を木っ端みじんに破壊する。カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した怪作だ。 主人公のアレクシア(アガト・ルセル)は、怪物的な存在だ。幼い頃に交通事故に遭い、頭にチタン板を埋め込まれている。他人の意思はおかまいなし、ためらいなく人も殺す。キャデラックに欲情し激しく交わり、やがて妊娠する。 「……?」という気持ちはよく分かる。しかしアレクシアの腹は刻々とふくらみ、エンジンオイルのような黒い液体が体内から漏れて出てくる。同性愛の相手を殺害し警察の手が伸びて、アレク...