時代の目:「アメリカン・ユートピア」 多様性と可能性、ライブで
アンプもスピーカーもない空っぽの舞台。そこに哲学者のような風情の男が、人間の脳の模型を手に現れる。そんな奇妙な光景に目を奪われる本作は、元トーキング・ヘッズのデイヴィッド・バーンがコロナ禍直前にブロードウェーで開いたコンサートの記録映画。とてつもなく型破りで刺激的、驚きに満ちたショーの幕開きだ。 アルバム「アメリカン・ユートピア」とトーキング・ヘッズ時代の曲からなるステージは、無国籍な音楽の楽しさのみならず、視覚的な美とスリルにあふれている。ワイヤレスの楽器を携えたミュージシャンとダンサーは、持ち場に束縛されず縦横無尽に動き回る。アフリカや中南米系など見た目はバラバラの総勢11人がグレーのス...