時代の目:「きこえなかったあの日」 10年の軌跡、少しずつ進む
東日本大震災から10年。地震直後からたくさんのドキュメンタリー作品が作られ続け、今なお語られるべき物語がある。「きこえなかったあの日」では、自身も聴覚障害を持つ今村彩子監督が、宮城県の被災地のろう者を訪ね歩く。今村監督はろう者の視点に立ったドキュメンタリーを手がけてきた。被災地にも通い、同じ人たちにカメラを向けて、これまでも「架け橋 きこえなかった3・11」(2013年)などの作品として発表。今作はコロナ禍に覆われるまでの10年間をまとめ、さらに16年の熊本地震、18年の西日本豪雨の被災地での取材も織り込んだ。 映画は多数派の視界からこぼれがちな人々の不安、今なお続く苦労を映し出す。意思疎通...