「ロストケア」 穴が開いた長寿社会で
小さな町のケアセンターに勤める介護士、斯波(しば)(松山ケンイチ)は献身的な仕事ぶりで誰からも慕われていたが、その裏で施設利用者を大量に殺害していたことが明らかになる。葉真中顕の小説を映画化したこの作品、高齢化社会の過酷な現実をエンターテインメントの中に描こうとした意欲作。 物語の前半はミステリー調。施設利用者の家で利用者と施設管理者の死体が発見される事件を端緒に、検事の大友(長澤まさみ)が斯波に疑いの目を向ける。物証がない中で数字に強い事務官の椎名(鈴鹿央士)がデータから真相に迫る過程は、なかなかスリリング。しかし映画の主眼は斯波が犯行を認めてからの、大友との議論にある。 「誤った正義感...