この1本:「ほつれる」 心模様を巧みに表現
特別なところのない夫婦の、別れ話のてんまつ。と言ってしまったら身もフタもないが、これが驚くほどリアル。人間関係の緊張が、ヒリヒリするような臨場感とともに伝わってくる。小粒ながら微細な細工が施され、淡々としていても濃密な一作である。 夫の文則(田村健太郎)との関係がギクシャクしている綿子(門脇麦)は、木村(染谷将太)とひそかな関係を持っていた。2人が旅行から戻った日、目の前で木村が事故死する。文則は木村の存在に気付かず、夫婦関係を修復しようと綿子に持ちかけ、綿子は平静を保って応じるのだが……。 人の感情は重層的で、見かけと心の内はしばしば一致しない。この映画が描こうとするのは、画面やセリフに...