この1本:「HOKUSAI」 若き独創、老いの気骨
「富嶽三十六景」などで知られる江戸時代の絵師、葛飾北斎の伝記映画には違いないが、堅苦しさや説教臭さはほとんどない。一人の男の信念と熱情を描いたエンターテインメントとして、北斎や時代劇好きでなくとも楽しめる作りになっている。 青年期の北斎を柳楽優弥、老年期を田中泯が演じる。北斎は版元の蔦屋重三郎(阿部寛)から目を付けられるが、喜多川歌麿(玉木宏)や東洲斎写楽の力量に打ちのめされ旅に出る。「なぜ絵を描くのか」「何を描きたいか」。絵を描くことにとりつかれながらも、いらだち混迷する若者の姿は時代や世界を超えて通じるものがある。 老年期には、脳卒中で倒れても、震える体で再び旅に出て創作意欲をたぎらせる...