毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2021.12.23
データで読解:新しい形で伝える物語
2021年も締めくくり。年間の興行収入は昨年を少し上回るものの、19年以前の「例年」比では6~7割となる見込み。映画館で映画を見る映画参加者人口も新型コロナウイルス禍前と比べて3分の2程度まで減少した。一方で、有料定額制動画配信サービスの利用者は大幅に増加。映像を楽しむ二つの方法は大きく異なる状況となった。
しかし人々が映画館に来なくなったのは、動画配信での映画視聴が増えたことが主な理由ではない。そもそも配信サービスの視聴数や視聴時間の大半は、アニメやドラマである。むしろ配信が映画興行の後押しとなる側面もある。劇場公開時にその映画の関連作品は、動画配信視聴数が増える傾向にある。例えば、動員ランキング上位の「マトリックス」「あなたの番です」「ボス・ベイビー」などもそうだ。ボタン一つで過去作品や関連作品、つまりその映画の世界観に触れられることは新作の興味度を上げ、鑑賞体験価値を高める。
足が遠のいた映画ファンの背中を押すのは、コロナ禍の終息と作品の力。来年に公開が控えている期待作でさらに多くの人が映画館に戻ってくるだろう。コロナ禍で映像エンターテインメントは変化した。新しい形で作品が観客を見つけて物語を伝えていく。(GEM Partners代表・梅津文) =毎月最終金曜掲載