毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2022.2.17
チャートの裏側:二枚看板の神通力に壁
「ウエスト・サイド・ストーリー」は、洋画興行の今後の展開を探る上で、重要な作品である。この名だたる作品をスティーブン・スピルバーグが監督した。同監督の興行力は落ちたが、今回は二枚看板の強みがある。スタート3日間の興行収入は2億3000万円だった。
映画史を刻んだハリウッドの際立つ真骨頂が二つある。ミュージカルとダンスだ。本作は、この二極を強力に束ねて現代によみがえらせる。そこから、映画のダイナミズム、快楽、感動が沸騰する。さきに挙げた数字は、大作としては普通の成績である。普通では物足りない。
映画には存分に力が備わっている。ところが、その及ぼす力が限定性を帯びると言うべきか。見る側の意識の変化が、やはり根っこにある。さきの二枚看板、二極という言い方そのものが、広範囲での神通力を落としている。映画の力という意味が相対化されてきたのである。
今回も、次の常とう句のような言い回しを繰り返すしかない。洋画ヒットのジャンル的な範囲は、どんどん狭まっていると。二枚看板でも、その大きな突破口にはならない。であれば、洋画低迷を覆す新たな組み合わせカードを、今後も探すことになる。カードは出てくるだろうが、普通は越えられるか。壁は相当に強固で厚いとみるべきか。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)