「EVOL (イーヴォー) ~しょぼ能力で、正義を滅ぼせ。~」より  ©KANEKO Atsushi / KADOKAWA 刊 ©DMM TV

「EVOL (イーヴォー) ~しょぼ能力で、正義を滅ぼせ。~」より  ©KANEKO Atsushi / KADOKAWA 刊 ©DMM TV

2023.11.06

(1話ネタバレあり)注目の俳優、青木柚の最新主演ドラマ「EVOL (イーヴォー)~しょぼ能力で、正義を滅ぼせ。~」:オンラインの森

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品を選びます。案内人は、須永貴子、大野友嘉子、梅山富美子の3人に加え、各ジャンルの精鋭たちが不定期で寄稿します。

ひとしねま

須永貴子

「はだかのゆめ」「神回」「なみ100%」「The Night Before 飛べない天使」と、青木柚の主演映画が続々と劇場公開されている。配信ドラマでも、昨年9月に配信されたAmazon Original ドラマ「モアザンワーズ/More Than Words」以来となる主演作「EVOL(イーヴォー)~しょぼ能力で、正義を滅ぼせ。~」(以下「イーヴォー~」)が、11月3日(金)よりDMM TVにて独占配信がスタートした。原作はカネコアツシの連載中のコミック「EVOL(イーヴォー)」だ。
 

 

プチ超能力を得た3人の中学生役で青木柚、服部樹咲、伊礼姫奈がトリプル主演

シリアス系、アート系、コメディタッチのものなど作品のトーンに違いはあれど、青木は等身大の青年役を多く演じてきた。「イーヴォー」で演じる役は、自殺をしそこねたことで左手の人し指で直径1センチ、深さ3センチの穴が開けられるプチ超能力を得た、男子中学生の児玉ノゾミだ。22歳の俳優にとって、原作のビジュアルに寄せて中学生役を演じるのは簡単ではないだろう。
 
第1話は、海に沈んでいくチアガール・新山サクラ(服部樹咲)、冷凍施設で眠る制服姿の土屋アカリ(伊礼姫奈)、上半身裸のノゾミが胸から煙を上げて洗面所に倒れている3シーンの連続で幕を開ける。現実世界になんらかの理由で絶望した3人の自殺シーンなのだが、3人とも失敗し、同じ入院施設に収容される。
 
サクラは5センチだけ空を飛べる力が、アカリは手のひらから小さな火を出す力が、ノゾミと同じく自殺し損ねたときに芽生えていた。3人はその能力を使い、施設からの脱走に成功する。
 
毎週金曜日に1エピソードずつ配信されるので、この先のネタバレは控えるが、トリプル主演となる青木、伊礼、服部のアンサンブルと、原作へのリスペクトが感じられるビジュアルを見るだけでも価値がある。常に険しい表情で上目遣いに人をにらみつける内向的なアカリ。女王のようにふるまう外交的なサクラ。タイプの違う凶暴性をむき出しにする女子2人に、けおされるノゾミ。
 
実年齢が17歳の2人に並んでも、違和感のない青木に驚いた。3人とも風貌は高校生といった方がしっくりするが、表情やせりふ回しで中学生の幼さを見事に表現しているのだ。また、ノゾミは原作よりもオドオド感が少なくひょうひょうとしていて、異能ものというジャンル作品でも青木の作り込みすぎないリアルなアプローチは健在だ。
 

監督は気鋭のディレクター、山岸聖太。6話をどう着地させるか楽しみだ

監督の山岸聖太は、根本宗子の戯曲「もっと超越したところへ。」を、大胆なギミックを使い見事に映画化した気鋭の映像ディレクターだ。第1話では、3人のプチ超能力はもちろん、すでにヒーロー=正義の味方として街を守るライトニングボルト(金子ノブアキ)とその妹サンダーガール(芋生悠)が操る手のひらから電気を出し、空を飛ぶ超能力もふんだんに見せていく。
 
壊した橋から路線バスが落ちそうになったところを、ライトニングボルトとサンダーガールが電気の力で助け出すのだが、このライトニングボルトの言動がどうもひっかかる。
 
バスに乗っていた少年から「ぼくもいつか、ライトニングさんみたいなヒーローになれるかな?」とキラキラした目で質問され、ライトニングは「それは無理だ!」と即答する。そして「なぜなら! ヒーローは血筋なのである。この能力は遺伝によってのみ受け継がれるのだ! キミがどれだけ懸命に努力をしたとて、どうなるものでもない。諦めたまえ!」「一般の子よ、これだけは言っておく。キミはヒーローには絶対になれない。しかし希望を捨てるな! キミは、キミらしく、ありふれた人生を生きるのだ!」と追い打ちをかけるのだ。
 
いたずらに幻想を抱かせないことも大事かもしれないが、言葉選びがひどすぎやしませんか、ライトニングさんよ。そもそも、たまたま特殊能力を持って生まれただけで、ヒーローとしての志なんてものはなく、政治家と同じでただの世襲だ。しかも原発の建設をもくろんでいる市長(安田顕)に飼いならされているみたいだし。
 
そんなクソみたいな大人たちが正しいとされる世界に絶望した3人は、絶望の果てに超能力を手に入れた。第2話では彼らを自殺に追い込んだ、かなり胸クソ悪い理由が明らかになる。そして、自分たちを壊したこの世界を壊すために、3人はEVOL=邪悪なワルモノになることを決意する(EVILではなくEVOLなのはノゾミのスペルミス)。ノゾミ、アカリ、サクラのダークヒーローとしての活躍と成長(=暴走?)、そして全6話をどう着地させるのかが楽しみだ。
 
「EVOL(イーヴォー) ~しょぼ能力で、正義を滅ぼせ。~」はDMMTVで独占配信中

ライター
ひとしねま

須永貴子

すなが・たかこ ライター。映画やドラマ、TVバラエティーをメインの領域に、インタビューや作品レビューを執筆。仕事以外で好きなものは、食、酒、旅、犬。

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