毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2021.1.14
「キング・オブ・シーヴズ」
かつて泥棒王と呼ばれ引退していたブライアン(マイケル・ケイン)は、妻の急逝後に知人のバジルに誘われ、ロンドン随一の宝飾店街ハットンガーデンの銀行の貸金庫での窃盗を計画する。テリー(ジム・ブロードベント)やケニー(トム・コートネイ)ら泥棒仲間の悪友を集めるが、ブライアンは途中で計画から離脱してしまう。
平均年齢60歳以上という英国史上最高齢の金庫破り集団の実話を映画化。ITというより「昔取ったきねづか」を駆使して大窃盗に挑むが、トイレが近い、居眠り、耳が遠いなど年寄りネタでも笑わせる。窃盗自体は緻密な計画を立てたが、盗んだ後の逃走などは全く考えておらずずぼらそのもの。分け前を巡るいさかいでは欲がギラギラと前面に出て人間くさい。じいさんたちのとりとめの無い泥棒話に付き合っている感覚だ。何より金庫破りを生き生きと楽しんでいる老人パワーにあふれている。ジェームズ・マーシュ監督。1時間48分。東京・TOHOシネマズシャンテ、大阪ステーションシティシネマほか。(鈴)
異論あり
設定と前半まではワクワクしていたものの、次第に思っていたのとは違う方向へ。最後には何かあるのでは?と期待してしまったが、ますますこれが現実かと思い知らされる展開だった。実話であることをもっと意識して見ていれば逆に「映画みたい!」と楽しめたのかもしれない。(久)