毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2021.4.08
ドリームランド
世界恐慌下の1930年代。テキサスの田舎町で暮らす17歳のユージン(フィン・コール)は、警察に追われる銀行強盗犯のアリソン(マーゴット・ロビー)と出会う。アリソンにひかれたユージンは彼女をかくまい、ふたりは逃避行を夢見るが……。
脚本にほれ込んだロビーがプロデューサーと主演を務めたラブストーリー。「スーサイド・スクワッド」などのヒット作に出演した彼女が指名した新鋭監督、マイルズ・ジョリス・ペイラフィットは期待に応えた。荒廃した時代のムードを伝え、新天地への憧れを募らせるふたりの心情に重なるような美しい映像もバランスよく配している。
無垢(むく)な少年が危険な香りのする年上の女性と出会って破滅的な道へ突き進むストーリーは、さすがに既視感あり。妹のナレーション以外にも、もうひとひねり欲しかった。通過儀礼的に描かれるふたりのモーテルでのシーンをはじめ、運命の女を演じたロビーの美しさが際立っている。1時間41分。東京・新宿武蔵野館、大阪ステーションシティシネマほか。(細)
ここに注目
田舎臭いワンピースを着ても砂まみれになってもまばゆいロビー。彼女がいるだけでそのシーンは印象的なものになる。ストーリー自体はありがちで結末も予測とそれほど違わないのだが、それが当時まだ幼かったユージンの妹の視点で語られることによって柔らかな余韻が残る。(久)