新作「哀れなるものたち」で2度目のアカデミー賞主演女優賞の期待も高まるエマ・ストーン。公開に合わせ、硬軟のバランスが取れたキャリアと魅力、オススメ作品を紹介します。
2024.1.19
エマ・ストーンのキャリアの軌跡 キュートで親しみやすさが魅力の若手からオスカー俳優へ
米アカデミー賞に3度ノミネートされ、「ラ・ラ・ランド」(2016年)で主演女優賞を受賞。さらに先のゴールデングローブ賞では「ラ・ラ・ランド」に続き、「哀れなるものたち」(23年)で2度目の女優賞(コメディー/ミュージカル部門)に輝いたエマ・ストーンは、今や押しも押されもせぬハリウッドのトップ女優だ。
「ゾンビランド」より © 2009 Columbia Pictures Industries, Inc. and Beverly Blvd LLC. All Rights Reserved.
日本での初お目見えとなった全米大ヒット作「ゾンビランド」で脚光を浴びる
過去10年において「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(14年)や「女王陛下のお気に入り」(18年)など、全米賞レースに絡む話題作に出演してきたストーンだが、それ以前から〝演技派〟と目されていたわけではなかった。なぜならキャリアの初期は、映画賞とはほとんど無縁のコメディー畑に身を置いていたからだ。
いくつかのテレビシリーズへのゲスト出演を経て、ストーンが映画デビューを果たしたのは「スーパーバッド 童貞ウォーズ」(07年)だった。「40歳の童貞男」(05年)で大ヒットを飛ばしたジャド・アパトーが製作を務めたこの映画は、高校卒業までに意中の女の子との初体験をかなえようとする童貞トリオの奮闘劇。ストーンは出番こそ少ないものの、パーティー主催者の女子高校生ジュールズにふんし、ジョナ・ヒル相手にコミカルな掛け合いを見せた。
アンナ・ファリスがプレイボーイ誌のピンナップガールにふんした「キューティ・バニー」(08年)では、女子寮閉鎖の危機に直面している女子大生ナタリー役。珍しく地味なメガネっ娘(こ)として登場するストーンが、ひたすらノーテンキでハイテンションな主人公の指南によって〝華麗なる変身〟を遂げていく様が見ものの痛快作だった。
音楽コメディー「ROCKER 40歳のロック☆デビュー」(08年)、ライアン・レイノルズと共演した「ペーパーマン」(09年)でも脇役でチャーミングな存在感を示したストーンが一躍脚光を浴びたのは、全米大ヒット作「ゾンビランド」(09年)だった。
生きるしかばねが大量発生したアメリカをしたたかにサバイブする詐欺師姉妹の姉ウィチタ役。「誰も信じるな」をモットーに生きるハードボイルドなキャラクターと、ストーンの持ち前のハスキーボイス、ちょっぴりゴス風のメークが完璧にマッチし、ウディ・ハレルソン、ジェシー・アイゼンバーグ、アビゲイル・ブレスリンという芸達者な共演者とのアンサンブルも絶妙の一作だった。
前述した初期のコメディーはすべて劇場未公開/DVDスルーにとどまったため、「ゾンビランド」が日本におけるストーンのスクリーン初お目見え作となった。
「小悪魔はなぜモテる⁈」より © 2010 Screen Gems,Inc. All Rights Reserved.
初の単独主演作「小悪魔はなぜモテる?!」でゴールデングローブ賞に初ノミネート
「小悪魔はなぜモテる?!」(10年)はストーンの記念すべき初の単独主演作。カリフォルニア州のごく普通の女子高校生オリーブが、大学生と寝て処女を喪失したと親友に告げる。それはちょっとした出来心で口にしたウソだったが、またたく間に学校中に尾ひれのついたウワサが広まり、オリーブは尻軽な〝ビッチ〟というレッテルを貼られてしまう。
実はこれ、ナサニエル・ホーソンの有名な歴史文学「緋文字」にインスパイアされた青春ラブコメ。17世紀の厳格なピューリタン社会を背景にした原作を、現代のハイスクールに舞台を置き換え、ふしだらな〝罪〟をめぐるティーンの狂騒を痛烈な皮肉とユーモアたっぷりに描いた風刺喜劇なのだ。
企画の初期段階から脚本を気に入って出演を熱望したというストーンは、はからずも学園じゅうの注目の的になり、開き直ったように奔放に振る舞う主人公をいきいきと好演。天性のファニーな魅力を爆発させ、初めて主要な映画賞(ゴールデングローブ賞女優賞)にノミネートされた。低予算ながら興行的にも大成功を収めたこの映画は、リース・ウィザースプーンらにも通じるストーンの作品選びの目の確かさを証明した。
「ラブ・アゲイン」より © 2011 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights reserved.
声を大にしてオススメしたいロマコメ「ラブ・アゲイン」
最後に、声を大にしてオススメしたい傑作ロマコメが「ラブ・アゲイン」(11年)だ。スティーブ・カレル、ライアン・ゴズリング、ジュリアン・ムーア、マリサ・トメイ、ケビン・ベーコンが共演したこの豪華キャスト映画は、終始笑いが絶えないうえに、終盤にまさかのどんでん返しがさく裂する群像劇。ストーンはのちに「ラ・ラ・ランド」で再び顔を合わせるゴズリングとのパートで、無敵のプレーボーイをとりこにする弁護士志望の女性ハンナを演じた。
その後、ストーンは「ヘルプ 心がつなぐストーリー」(11年)、「アメイジング・スパイダーマン」(12年)などに相次いで出演し、トップスターへの階段を駆け上がっていったが、コメディーを主戦場にしていた若手女優が幾度も賞レースに絡むほどの〝演技派〟へと転身した成功例は決して多くない。ざっと思い浮かぶところでは、リース・ウィザースプーン、サンドラ・ブロック、エイミー・アダムス、アン・ハサウェイくらいだろう。
シリアスな演技と豪快に弾けたときのギャップの大きさ、しなやかに躍動する身体性など、ストーンを特徴づけるいくつかの強烈な個性は、初期のコメディー時代から培われていた。新たな代表作となるであろう「哀れなるものたち」の公開を機に、ぜひ本記事で紹介した作品群をチェックしてみてほしい。
<画像使用作品一覧>
「ラブ・アゲイン」
Blu-ray:2619円(税込み) DVD:1572円(税込み)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
※2024年1月現在の情報です。
© 2011 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights reserved.
「ゾンビランド」
4K ULTRA HD & Blu-rayセット:5217円(税込み)
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
※2024年1月現在の情報です。
© 2009 Columbia Pictures Industries, Inc. and Beverly Blvd LLC. All Rights Reserved.
「小悪魔はなぜモテる?!」
Blu-ray:2619円(税込み) DVD:1551円(税込み)
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
※2024年1月現在の情報です。
© 2010 Screen Gems,Inc. All Rights Reserved.