チャートの裏側

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2021.12.16

チャートの裏側:ドラマ「劇場版」の行方は

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

今年、テレビドラマの映画化作品は意外にヒットが少なかった。新型コロナウイルス禍の興行を支え、興行収入30億円以上が2本あった昨年と比べると一目瞭然だ。これまで10億円台に乗った作品は「劇場版 きのう何食べた?」と「劇場版 奥様は、取り扱い注意」の2本のみである。

その最新作が「あなたの番です 劇場版」だ。3日間で4億5000万円を記録し、ヒットの出足と言える。本作は、ドラマ、配信など多映像型展開から起こったブームが、製作の引き金になっていると思われる。多人数が絡み合う異色ミステリーに新規性があったようだ。

映画は、クルーズ船に乗り込んだ同じマンションの住人たちが殺人事件に巻き込まれる。すぐに、これは通常のミステリー映画とは違うとわかる。緊迫感が乏しく、画面の深みもあまりない。住人たちの意味ありげなそぶりが随所で描かれるが、映画的な興奮度とは別物だ。

表現は少しおかしいが、ミステリー・バラエティーショーのような趣があった。ミステリー仕立ての軽いノリで、その場その場が進行していく。観客にはドラマファンが多いが、本作を独立した映画として接しようとする人は、かなり忍耐を必要とするのではないか。どのような興行の推移を見せるのか。ちょっとした見ものだと思う。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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