©2023 Disney

©2023 Disney

2023.3.24

熊本在住のZ世代俳優志望が見た「ダイナソー」

Y2K=2000年代のファッションやカルチャーが、Z世代の注目を集めています。映画もたくさんありました。懐かしくて新しい、あの時代のあの映画、語ってもらいます。

中川穂乃香

中川穂乃香

突然だが、私は最近見ることがなくなってしまった子供向け映画作品をよく見るようになった。新たに発表されたものから懐かしい作品までとにかく目に付いた子供向け映画を夜にマッサージやストレッチをしながら、食い入るようにしっぽり見る。その理由は子供向け映画は大人になるにつれ、忘れつつある素直で純粋な気持ちを思い出させてくれるからである。幼い頃はただ面白くて見ていた作品も大人になってもう一度見てみると理解できること、共感できる部分が増え、より深く作品を楽しむことができる。見る視点が変化したことでその作品が子供たちに何を伝えたかったのかを考えた時、大人になるにつれ忘れつつある気持ちや、自分のなりたかった大人像を思い返し改めて自分を見つめ直す、そんな機会を子供向け映画は与えてくれるのだ。
 

キツネザルの深い愛に強い衝撃

私が大好きな恐竜を題材にしたダイナソーは2000年に公開されたディズニーのアニメ映画で、人間のような感情や表情を持ち言葉を話すという設定の恐竜たちが生きた時代、6500万年前の白亜紀末期を舞台に物語が繰り広げられる。個人的にこの作品の面白いところは、本作の主人公アラダーがキツネザルの一家により大切に育てられているという部分だ。幼い頃は小さなキツネザルがどうやって大きなアラダーを育てたのだろうとそればかり気になっていたが、自身が大人になってからは他の種、ましてや凶暴な肉食恐竜かもしれない存在を自身の子と同等、いやならそれ以上に愛し育てるキツネザルの深い愛に強い衝撃を受けた。
 

大軍のリーダー・クローンの見方

そしていつも考える。自分はちゃんと相手に対して愛や優しさを持っているか、相手の気持ちを受け止められているか、ないがしろにしてはいないか、損得で考えてはいないか。地球で幸せに暮らしていた古生物たちだが、ある日巨大な隕石(いんせき)が追突し環境が激変する。大災害を生き延びた主人公アラダーとキツネザル一家は、アラダーと同じ種であるイグアノドンを中心とした大群と合流し緑の楽園「命の大地」を目指す。この大軍のリーダー・クローンは幼い子供や早く動けない老いた恐竜などの弱者や、自分の意見を聞かないものは容赦無く置き去りにする独裁的な態度が一貫していた。大災害で満足に生活できない環境で、肉食恐竜に勝てない草食恐竜が群れから離れるというのは死を意味しているようなものだ。
 
面白いのはこのクローン。幼い頃は少しでも仲間を生かすための責任感から厳しい態度なのだとそう思い、自ら嫌われ役を演じるクローンを私は好んでいたが、いざ再び見てみると本当に悪者である。悪いように見えて実はいい人だという結末が人生では絶対ではないことを暗に示しているようで好きだ。
 

人気恐竜の陰に隠れがちな恐竜たち

また、この大群は結果的に後れをとっていた老いた恐竜たちに窮地を救われる。このような部分もよく祖父母から聞いていた豆知識などを思い出して、お年寄りの言うことと牛のしりがいは外れない的なものだなとそう思う。そして次の日には普段は少し適当に接してしまうご老人との会話を大切にするのだ。さまざまな危機を乗り越えながら進んでいくアラダーたちは無事に命の大地にたどり着くことができたのか。
 
そして素直なアラダーが大群に与える大きな影響により、クローンの独裁政治に従うだけで保守的だった恐竜たちがどう変化していくのかもその目で感じてほしい。また、個人的には人気恐竜であるTレックスやトリケラトプスたちが生きた時代ではなく、人気恐竜の陰に隠れがちな恐竜たちの時代が描かれている部分も恐竜好きからしたらとてもお熱い舞台設定で大変オススメである。
 
ディズニープラスで配信中

ライター
中川穂乃香

中川穂乃香

2000年10月20日生まれ 熊本県出身。地元熊本から福岡市に通いレッスンを受け女優を目指す。趣味は 映画鑑賞・読書・マンガ制作。

この記事の写真を見る

  •  ©2023 Disney
さらに写真を見る(合計1枚)