「裸足で鳴らしてみせろ」©2021 PFFパートナーズ(ぴあ、ホリプロ、日活)一般社団法人PFF

「裸足で鳴らしてみせろ」©2021 PFFパートナーズ(ぴあ、ホリプロ、日活)一般社団法人PFF

2022.8.05

裸足で鳴らしてみせろ

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)。

父が経営する不用品回収会社で働く直己(佐々木詩音)が、市営プールで槙(諏訪珠理)という青年と出会う。槙は外国に思いをはせる盲目の養母、美鳥(風吹ジュン)と暮らしていた。やがて直己と槙はレコーダーを手にし、美鳥のために世界各地の〝架空の音〟を記録していく。

大学の卒業制作作品「オーファンズ・ブルース」で注目された工藤梨穂監督の商業映画デビュー作。多くの著名監督を輩出してきたPFF(ぴあフィルムフェスティバル)のスカラシップ作品である。

田舎町の現実から抜け出せない若者たちが、偽りの世界旅行を繰り広げ、恋に落ちていく。しかし精神的に未熟で孤独な彼らは、ひかれ合うその思いを言葉や抱擁で素直に表現できない。工藤監督はそんな愛の矛盾にぶちあたった2人のもどかしさを、荒々しい格闘シーンとして表出させた。冗長な場面はあるものの、登場人物の内なる切なさや痛みが、繊細な音、光と共鳴する瞬間には、映画的な魅惑が息づいている。2時間8分。6日から東京・ユーロスペース。全国順次公開。(諭)

異論あり

直己と槙の愛情表現であるじゃれ合いの場面があまりに多くへきえきした。2人の感情の発露や機微を丁寧に映し撮ろうとする演出には好感を持つが、単調な反復は冗長感をも生んでしまった。直己の中盤以降の唐突な行動にも違和感があり、LGBTの描写もなんだか中途半端。(鈴)

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