【シリーズ名】恐怖コレクター 【作】佐東みどり・鶴田法男 【絵】よん 【判型】新書版 【発行】KADOKAWA(角川つばさ文庫)

【シリーズ名】恐怖コレクター 【作】佐東みどり・鶴田法男 【絵】よん 【判型】新書版 【発行】KADOKAWA(角川つばさ文庫)

2022.3.16

読者とツーウエイで描く都市伝説「恐怖コレクター」

出版社が映画化したい!と妄想している原作本を担当者が紹介。近い将来、この作品が映画化されるかも。
皆様ぜひとも映画好きの先買い読書をお楽しみください。

ひとしねま

村元可奈

シリーズ累計70万部突破

都市伝説のウワサが広がる町では、「赤いフードの少年」千野フシギが目撃されている。彼は「赤い手帳」で、都市伝説の呪いを“回収”しているようだが……。時に自らの命を危険にさらし、時に都市伝説に襲われた人々を救いながら、呪いを回収する少年・フシギと、呪いをバラまく妹・ヒミツの“終わらない鬼ごっこ”と、その恐怖に翻弄(ほんろう)される人々を描いた、短編オムニバス・ホラーストーリー「恐怖コレクター」。2015年に始まった角川つばさ文庫の超人気ホラーシリーズで、22年2月に18巻が発売され、累計部数は70万部を突破。同年3月にはコミカライズ版の発売も控え、文字通り“みんな読んでる”ホラー作品として、小中学生の間ではおなじみの存在となっている。
 

都市伝説の目撃者になる

本作がこれだけ高い支持を誇る最大の理由は、ずばり「都市伝説」を主題に掲げているところだろう。都市伝説は、「友達の友達から聞いたんだけど……」などと、実際に体験した人は特定できずとも「本当にあったこと」として広がっていくことが多い。ウワサの真偽が分からないからこそ、「次は自分が都市伝説の目撃者になるかもしれない——」というリアルな恐怖が、世代を問わず人々の心をつかむのだ。スマートフォンの普及に伴い、“ウワサ”の広まり方も口伝だけではなくネット交流サービス(SNS)や動画サイトなどを介したものに進化している。本作では、全国の読者から寄せられた“ウワサ”をもとに、今、人々を本当に怖がらせている都市伝説を題材にして、物語を展開させている。

 
個性豊かなキャラクターたち

さらに、忘れてはならない本作の魅力は、主人公・千野フシギとその妹・ヒミツのキャラクターだ。主人公の千野フシギは、“赤いフード”というアイキャッチな服装に甘いマスク。だがどこか影があり近づきがたい。都市伝説に襲われている人々を目撃しても、「僕には関係ない」などと言い放つ孤高の人物だ。だが、妹・ヒミツのためならば自分の命さえ投げ出そうとする“熱さ”も持ち、フシギに恋する女子読者からのファンレターがひっきりなしに届くほど、読み手の心をわしづかみにしている。呪いをバラまく“黒いフードの少女”ヒミツは、フシギの双子の妹。長い黒髪が美しい素直で可愛い少女だが、何者かに顔と心を奪われてしまい、目も鼻も口もない姿で町をさまよっている。その他、関西弁でまくしたてる“おじさん”人面犬の「ジミー」や、息をのむほどに美しいルックスながら次々に人を不幸に陥れる「青い傘の男」、フシギを敵とみなして追いかけてくる熱血漢の少年「雷太」、絶対に裏の顔がありそうな美青年でフシギたちの兄「マボロシ」など、個性豊かなキャラクターたちが脇を固める。スクリーンでも映えることまちがいなし、だろう。
 

数々の映像作品を世に届けてきた二人

著者は、脚本家・小説家の佐東みどり氏と、映画監督の鶴田法男氏。「ほんとにあった怖い話」をはじめ、“Jホラーの父”として日本ホラー界で唯一無二の存在である鶴田氏が演出する「恐怖」の世界は、老若男女全ての読者を文句なしに震え上がらせる力を持つ。そのウエットでダークな世界を、子供たちでも読みやすいテンポの良い筆致と個性的なキャラクターで彩っているのが佐東氏だ。数々の映像作品を世に届けてきた二人が心血を注いだ本作以上に、映像化にふさわしい原作はないだろう。
 
担当としては、田んぼにたたずむ白い影が恐ろしい、都市伝説の“王道”とも言える「くねくね」、スマホで写真を撮ったら呪われる、現代ならではの都市伝説「ナノカちゃん」、家中の隙間(すきま)をふさぎたくなる「隙間女」や、ダイナミックな演出が映える「八尺様」などを、是が非でもスクリーンで見てみたい。どこを切り取っても楽しめる「恐怖コレクター」シリーズ、どうぞご注目あれ。

ライター
ひとしねま

村元可奈

むらもと・かな 東京都出身。株式会社KADOKAWA角川つばさ文庫編集部所属。生活情報誌・コミックエッセーなどの編集を経て、2018年より児童書の編集に携わる。

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