第95回アカデミー賞が発表されました。2022年の映画界の潮流を読み解きます。
2023.3.12
アジアが席巻 多様化を象徴 「エブエブ」7冠 第95回アカデミー賞
第95回アカデミー賞の授賞式が12日(日本時間13日)、米ロサンゼルス・ハリウッドで開かれ、「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」が最優秀作品賞、ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナートの監督賞、ミシェル・ヨーの主演女優賞など最多7冠を達成した。白人男性偏重との批判を受けて多様化を進めるアカデミー賞の、変革が感じられる結果となった。
第95回アカデミー賞で助演男優賞を受賞したキー・ホイ・クァン(右端)=ロイター
多様化進むオスカー像
同作は独立系の製作会社、A24が製作。主人公は中国移民で、クワン監督は中国系、主演女優賞のミシェル・ヨーはマレーシア出身、助演男優賞のキー・ホイ・クァンはベトナム出身と、壇上にはアジア系の顔ぶれが並んだ。一方、作品賞の候補にもなったNetflix製作のドイツ語映画「西部戦線異状なし」は、国際長編映画賞のほか撮影、作曲、美術と4部門を制覇。
アジア系俳優の主演賞受賞は初めて。ヨーは香港のアクション映画でスターとなり、1997年「007/トゥモロー・ネバー・ダイ」でハリウッドに進出した。オスカー像を手に「私と似ている(アジアの)子どもたちへ。夢は大きく持てばかないます。そして女性たちへ。年を取り過ぎたとは言わせませんよ」とスピーチ。大喝采を受けた。
クァンはベトナム戦争後にロサンゼルスに移住し、「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」(84年)に出演して人気子役となった。その後俳優としての活動を休止したが、今作で復帰。受賞スピーチで「難民だった自分がここまで来た。これがアメリカンドリーム。夢を諦めないで」と涙ながらに呼びかけた。
同作は、中国移民の中年女性が、多元宇宙を崩壊から救おうとする冒険ファンタジー。
第95回アカデミー賞で監督賞を受賞した、ダニエル・クワン(右)とダニエル・シャイナート=ロイター
「西部戦線異状なし」は4賞
最優秀賞は以下の通り。
<作品賞>「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
<監督賞>ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
<主演男優賞>ブレンダン・フレイザー「ザ・ホエール」
<主演女優賞>ミシェル・ヨー「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
<助演男優賞>キー・ホイ・クァン「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
<助演女優賞>ジェイミー・リー・カーティス「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
<脚本賞>「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
<脚色賞>「ウーマン・トーキング 私たちの選択」
<撮影賞>「西部戦線異状なし」
<美術賞>「西部戦線異状なし」
<衣装デザイン>「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」
<音響賞>「トップガン マーヴェリック」
<編集賞>「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」
<作曲賞>「西部戦線異常なし」
<歌曲賞>「RRR」から「Naatu Naatu」
<視覚効果賞>「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」
<メーキャップ・ヘアスタイリング賞>「ザ・ホエール」
<短編実写映画賞>「アン・アイリッシュ・グッドバイ」
<国際長編映画賞>「西部戦線異状なし」
<長編アニメーション映画賞>「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」
<短編アニメーション映画賞>「ぼく モグラ キツネ 馬」
<長編ドキュメンタリー映画賞>「ナワリヌイ」
<短編ドキュメンタリー映画賞>「エレファント・ウィスパラー 聖なる象との絆」