「チャートの裏側」映画評論家の大高宏雄さんが、興行ランキングの背景を分析します

「チャートの裏側」映画評論家の大高宏雄さんが、興行ランキングの背景を分析します

2021.1.07

チャートの裏側:学ぶべきエンタメの潔さ

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)。

1都3県に及ぶ緊急事態宣言が発令された。映画館がどうなるのかも含め、何とも複雑な心境だ。緊急事態宣言とは、とても重い言葉、措置である。今回、人々の気持ちにどこまで届くのか。そう考えると、率先して映画館に来てくださいとは言えないのが歯がゆい。

頭を切り替えて、本題の正月興行に触れる。この三が日は、昨年と比べて全体で推定30%近く興行収入が下がったとみられる。12週目の「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が、いまだトップを走る。東宝配給作品(共同含む)が、上位6本を独占する邦画頼りでは限界がある。

その中では、韓国映画の「新感染半島ファイナル・ステージ」に注目したい。ゾンビ映画を、ここまでスケールアップさせてエンタメ大作にできるのは、本家本元の米国を除けば、韓国だけだろう。新作の正月作品では、問答無用に楽しめる。三が日では興収約1億円だった。

韓国映画で、よく言われることがある。製作資金に国の助成があり、市場が海外を向いている。邦画も見習ったらどうか。正論だが、もっと教わるべき点もあろう。作品の企画力、破天荒さだ。「新感染半島」は、稚気あふれるハチャメチャぶりに目を見張る。破綻もあるが、とにかく観客を飽きさせない。邦画が学ぶべきは、その潔さだ。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)